新米大統領就任と稀勢の里優勝

2017年01月21日[更新]

2017年1月21日は、日本で生活する私達にとっても、大きな話題が生まれた1日となりました。そのうちの一つが、トランプ新アメリカ大統領就任であり、もう一つが日本中が長年待ち焦がれていた稀勢の里関の優勝です。

これら2つの事に関係は全く無いのですが、それらを巡る人々の反応から、関連性を考えるべき事があると思うのです。

まずはトランプ大統領の就任について。この事を巡っては、多くの方々が色んな意見を述べられています。「自国内の話しに終始していた」「小学生でも分かる言葉が繰り返され、戦略の中味が見えてこない」といった批判が多いようです。それはその通りかも知れませんが、少し深く考えてみる必要があると思うのです。

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トランプ氏が最重要視しているのは「米国内での雇用増」です。恐らく「雇用を増やす事は国民所得の増加消費拡大に直結しあらゆる政策の基盤(ベース)になるものであって、これが確立されないと何をやっても波及効果に繋がらず成果を生み出さない」と考えているのではないでしょうか?

私の考えでも、これは正しいと思うのです。私が見る限り、メディアでは誰も語っていない論点ですが「高度成長期の日本の経済政策が機能したのは何故か?」と考えると答えが見えて来ると思うのです。今と当時の状況の違いは、

①日本国内で不足する資源は海外から輸入し、国内で加工して製品を輸出する形態が主だった

②日本国内で工場を作り、国内で雇用していた

③基本的には正社員として採用し、一時的な労働力の不足を外注やアルバイトで対応していた

増産が奨励されていたため、取引先へのコストダウン要求が比較的緩やかだった

⑤農業等の産業でも、基本的に国内生産を主として成り立っていた

要するに、基本的には国内でお金が回っていて、大雑把に言えば「輸出-輸入」のお金が国内に蓄積されていた、という事が言えると思うのです。この20年位で成長して来た中国でも、同様の構図だったと思います。こういった企業運営が基本でしたので「投資が投資を呼ぶ」「旺盛な国内消費需要」といった言葉が生まれていました。

こうやって基本に立ち返って見てみると、今のアメリカや日本が抱えている大きな問題の原因が見えて来ると思うのです。今のアメリカや日本は、これと真逆を行っているのではないでしょうか?トランプ氏は、高度成長期の日本と同じような状況をアメリカ国内に作り出したい、と考えているのではないかと私は感じています。それは全くの正解だと思います。

アメリカや日本の経済がうまくいっていないという事を象徴しているのが、桁外れに積み上がった企業の内部留保(利益剰余金)です。日本の大企業には大量のお金があっても、それが回っていかない、要するに消費が喚起されない構造に陥っている訳です。

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トランプ氏は「世界的な日本の自動車会社は、こんなにお金を貯め込んでいるのに、まだ更に安い人件費を求めて消費国を空洞化させるつもりなのか?」と言いたいのではないでしょうか?海外に生産拠点を展開しているアメリカ企業に対しても同様です。

今の日米の大企業の行動は、マルクス経済学と呼ばれる分野の学者や活動家達が述べていた事と酷似しています。

①資本家は労働者から搾取する事で利益を上げている

②資本家と労働者の格差は更に広がっていく

蓄積せよ、蓄積せよ、それが資本家の合言葉だ

カール・マルクスは、著書「資本論」の中で、英国産業革命期の状況を念頭に置いて議論を展開しています。色んな国の状況についても述べていますが、日本については「分からない」と述べていたと私は記憶しています。

要するに、世界中の産業先進国が利潤追求を続けていたのに、日本だけは例外だったという事だと思われます。そこで私が連想するのは、日本人の美徳とする考えであり、国技としての横綱相撲です。

今回の稀勢の里関の優勝に対する日本人の喜びようを見ていて、単に日本出身というだけではないコトを感じるのです。

私達が見ても、外国出身力士と日本出身力士では、特に三役以上の取り組み方が全く違っています。簡単に言えば「勝負事は勝てばいい」という事と「強いものには品格が必要で、勝つだけでは尊敬されない」という事ではないかと思うのです。横綱審議委員会も、そういった部分があるから、稀勢の里関の横綱昇進を後押ししたいという気持ちがあるのではないでしょうか?

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格差社会に陥ってしまった日本国民も、これからのあるべき姿として横綱相撲の復活を望んでいるのかも知れません。日本中から最も尊敬されている横綱相撲力士代表の一人として69連勝を記録した大分県宇佐市出身の双葉山関がいます。私は現役の頃を見ている訳ではないのですが、張り手やけたぐり、かち上げ、立ち合いの変化等は決してやらず、必ず相手の攻めを受け留めて、それから攻めていったそうです。「後の先(ごのせん)」と言われ、相手が攻めて来た時には既にその先を読んで反撃していったそうです。これが横綱相撲と言われるものです。

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では、企業が目指すべき横綱相撲とは何かというと「資源循環型経済社会の構築」であり「地産地消」です。外国で安い人件費を活用して利潤を上げて内部留保を溜め込み、その国の人件費が上がって来たらもっと安い国を求めていく、という姿勢に、品格はありません。それは形を変えた現代の植民地主義であり、そこにあるのは「自分の儲け」追求だけではないでしょうか?

そうやって考えていくと、トランプ大統領の政策も、方向性は正しいと思うのです。「アメリカで売る製品はアメリカで作れ」というのは、全く正しいと思います。そういった事を色々と考えさせられた1月21日でした。

明日から27日まで、出張や業務の関係で、ブログは一旦休ませて頂きます。

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