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古民家リフォームの問題解決(3)

2017年08月22日[更新]

これまで、2回に渡って紹介させて頂きました古民家リフォームの問題解決について、今日で完結させたいと思います。キッチンリフォームに際して、以下の5つの課題がありました。

①シロアリの被害で4cm沈下した柱があった。(今は生息していない)

基礎が無く、束もほとんどない状態だった。

耐震上の問題があった。

④桁や梁が低いため、天井高が低い

⑤天井高が低いため、換気扇のダクトが引けない

前回までで①~③の課題について紹介させて頂きましたので、今日は④⑤について、ご紹介させて頂きます。

 

まずは④について

以前は、桁や梁が低かったため、そのままボードを張り付け、天井高を低くしていました。しかしそれでは圧迫感が出てしまうため、桁を避ける形で天井ボードを張りました。その結果、次の写真の様な天井に仕上がっています。

このように、桁を避けるだけなら簡単なのですが、ここにキッチンを施工するとなると、次の写真のように上部収納(吊戸)が設置出来なくなってしまいます。

こうなると、デッドスペースが大きくなり、何とも中途半端な仕上がりになってしまいます。

という事で、以下のように扉の一部をカットし、キッチリと納めてしまいました。

右側の扉を開くと、こうなります。

左側の扉を開くと、こうです。桁に干渉せずに開閉出来ます。

そして全開にすると、こうなります。棚板も使いやすい高さに設置しました。

以上の通り、せっかく桁を避けて天井を高く出来ましたので、出入り口の鴨居も高くしました。古民家ですから、従来は1メートル80センチの位置にあったのですが、これを2メートルの高さまで20cm高くしました。下の写真の右側が、以前の高さです。天井と鴨居を高くしましたので、圧迫感が無くなり、広々とした空間へと生まれ変わりました。

以上が、④天井高が低い、という課題解決です。

 

最後に、⑤天井高が低いため、換気扇ダクトが引けない、について、解決策をご紹介します。

色々と検討したのですが、結論としては、屋根の上に鳩小屋を作ってダクト排気をしました。

周囲の瓦や漆喰壁と違和感の無い仕上げにしています。

 

以上の問題解決をした上で、更に以下の8つの工夫を凝らしています。

1.収納性を高めるため、可動棚作り付け収納の設置

2.寸法ピッタリで納まったダストボックス

3.油ハネが残らず、コンロ周りがメンテナンスフリーになる珪藻土タイル

4.洗い場に向かい合った作り付けカウンター

5.埃が溜まらないダウンライトと、臭い取りや湿気取りに優れた湯布珪藻土の塗り壁

6.飾りや置き物に便利なニッチ棚

7.柔らかくて暖かい、無節の杉床(大分県産)

8.回遊性を良くするための引戸

廊下側は、左側が3枚引戸、右側が2枚引戸で、閉めると次のようになります。

これを全開にすると、建具が邪魔にならず、出入りが出来ます。

反対の居間側も同様に、締め切る事も出来ますが、下の写真の様に4枚引戸を4枚重ねで納める事も出来ます。

 

古民家の寝室だった部屋をキッチンにリフォームした課題と解決策については、以上で全て終了です。他にも、ここでは書き切れない位、使い勝手の良くなる要素がいくつも織り込まれています。

古民家リフォームは、工事費も高めになるし、工事自体も大変になるという面はありますが、家族の歴史を残しながら快適な暮らしを実現出来るという意味では、最高に幸せなリフォームなのではないかと思います。

ご家族の思い出を大切にしながらの工事は、一律の答えは有りませんので、これからも施主様の思いを最大限に汲み取った工事を心掛けて参りたいと思います。

古民家リフォームの問題解決(2)

2017年08月18日[更新]

本ブログでご紹介させて頂いた古民家リフォームに関して、以下の問題を挙げておりました。

①シロアリの被害で4cm沈下した柱があった。(今は生息していない)

基礎が無く、束もほとんどない状態だった。

耐震上の問題があった。

④桁や梁が低いため、天井高が低い

⑤天井高が低いため、換気扇のダクトが引けない

前回は、①②についての解説をしましたので、今日は③について、ご紹介させて頂きます。

 

熊本地震による被害を調査した結果、直下率(2階の壁の下にも壁を設ける)が重要視されるようになって来ました。この現場で確認してみましたら、2階の壁の下に壁が全くない状態でしたので、梁が下の写真のように長年の重みに耐えかねて、割れてしまってました。

<画像をクリックすると、拡大して見れます>

この対策として、梁の下に基礎を作り、その上に耐震壁を作ります。基礎については、前回のブログでご紹介させて頂きました通りで、下の写真の様な頑丈な基礎を作りました。

そして、ホールダウンアンカーで基礎と土台・柱を一体化し、筋交も専用のプレートで柱脚を固定させます。

柱頭も同様に、専用金物(オメガコーナー)と筋交プレートで固定させます。

全体を見ると、こんな感じです。

その上には耐震用に、土台から梁まで一枚の構造用合板で固定させます。

耐震用の構造用合板の上には、仕上げ用下地の耐火ボードを張ります。

そして、全面に耐火ボードを張ってしまえば、壁下地まで完了です。

最終的には、この上に湯布珪藻土を塗って仕上げます。

以上で、③耐震上の問題があった、まで説明が終わりました。次回からは引き続き、④⑤について、ご紹介させて頂きます。