長寿命住宅は水との闘い①

2016年12月25日[更新]

高度成長期以前の日本の住宅は、100年以上の長寿命が当たり前でしたが、今は「築30~40年でも相当に手を入れない限り、建て替えるしかない」といった話しが出て来る位、短命になっているようです。この原因として、海外からの安価な輸入建材が挙げられますが、それ以外に「湿気の事をあまり考えない建築屋さんが増えて来た」という事も一因の様な気がします。

今日も、築45年のお宅の車庫兼テラスを解体していて、水を吸い過ぎて危険な状態になっている現場に出くわしました。

駐車場の上のテラスの状態ですが、工事前に確認すると、少し雨が降るとこんな水溜りになり、

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しばらく晴れてからでも、こんな状態(写真のアングルが良くないですが、水溜りが残ってます)が続き、

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その結果、この下のモルタル車庫の天井には、こんなクラックがたくさん入って、今にも落ちて来そうな状態になっています。

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天井面はエフロ(白華現象)で、真っ白になっています。

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こんな状態ですから、解体していると、中の鉄筋はサビて膨らんでます。その結果、コンクリにクラックが入ってしまう訳です。同様の事が外壁に起きると、壁が剥がれ落ちて落下するという事態にも発展してしまいます。

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そしてコンクリ面を斫っていても、水を吸っている箇所は脆くて簡単に壊れる(下の写真右側)のに対し、水捌けの良い箇所は硬くて粉になり、容易には壊れません(下の写真左側)。

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住まいの全ての箇所が、上の写真の左側の様に容易に壊れない状態になっていれば、家も長持ちする訳です。

これは、私の経験から来る話しですが、湿気対策としてモルタル塗りを行った場合、上の写真の右側のような脆い状態になっている事が多いです。要するに、モルタル塗りをすれば湿気対策になるといった誤った認識を持っている建築屋さんが多いという事です。

先日、ニュースで取り上げられていた豊洲市場の画像からも分かるように、モルタルは水を吸うし、水を通すのです。(地下水が沁み出し、床が水浸しになってましたよね?)

こうやって考えていくと、いつも思うのは「長寿命住宅は、水との闘いだ」という事です。水を制すれば、素材はモルタルでも木でも関係ありません。住宅の寿命を左右する大きな要素は、水の問題です。そして、根本的な原因を探って打ち手を講じるという事を当たり前に行わない限り、問題から逃れる事が出来ないんだという事を、日々、痛感させられています。今日も、そういう現場に出くわしました。

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