8月18日の本ブログに「地盤沈下によって擁壁が沈んで来た」という問題事象のご依頼について、記載していました。今日はその続きです。簡単に復習すると、大雨の際に発生した地割れと共に、崖側の擁壁が沈んで来たという問題でした。
そしてこれまでの対策は、沈んで来た箇所や地面全体に土を盛って、地割れの箇所から雨が浸み込んでいかないようにして来たそうですが、地盤沈下はドンドン進んで来て事態が一向に改善されなかったそうです。
要するに、これまでの問題は「眼の前に起きている問題箇所に対処療法的な対策を打って来ただけだった」という事です。発生した問題の原因特定が出来ていなかったとも言えます。大抵の人は、眼の前に大きな問題が発生すると「そこを早く消し去りたい」という衝動に駆られるようで、見た目の悪さを消す事を第一に考えた対策を講じる様です。それは恐らく「問題から早く逃げ出したい」という気持ちが根底にあるからではないかと思われます。
しかし、問題解決のプロとしてとるべき姿勢は「周辺事象も含めた物事の全体を見て原因を特定し、それに対して有効な打ち手を講じる」という事です。
今回のようなケースでは、現場周辺の地形を探る事が重要になって来ます。問題が起きる時には必ず原因があるからです。
この現場に関する最大の原因は、下の写真から探る事が出来ます。お分かりでしょうか?
地盤沈下した箇所に、盛土をしている様なんです。地山の形と地割れの箇所がほとんど一致しています。これ以上の事は、実際の工事を見ていないと分からないのですが、盛土の際にコンクリガラや石を埋めてしまうとそこに隙間が出来、雨が降るとその隙間に土が入り込んで地盤沈下してしまいます。更に大雨によって土が流れ出すと、その事自体が地盤沈下の原因になります。ですから、雨排水というのは、非常に重要な事だと私は考えています。
そもそも、家の側に排水溝があるにも関わらず、排水路を作るよりも盛土した側に自然排水させようとした事自体、地盤沈下を誘発する原因になったと考えられます。
4年前に行った工事だという事ですので、阪神淡路大震災や東日本大震災が発生した後です。盛土の問題は分かっていないといけないのですが、地震ではなく雨によって沈下して来たという事は、そもそも盛土の問題が軽視されていたと言えるのではないかと思われます。もし震度6以上の大きな地震が来ていたら、擁壁は崩落していた可能性が高いです。
今回の工事は、9月1日より開始する予定にしていますので、どういう対策を講じるのか、本ブログで御紹介させて頂くつもりです。公共工事でしたら、安全第一ですので大掛かりな工事が出来るのですが、個人宅の場合には予算制約の中で最大限の効果を出せる対策を講じる必要があります。そこに私達の知恵を出す意義があると思いますので、工事の状況もアップさせて頂きます。お楽しみに。